令和6年10月6日開催
令和6年10月6日、東京都立川市近郊において合気道S.A.主催による“つき貫ける合気”研究会が開催された。
“つき貫ける合気”とは「相手の力の壁にある繊細な隙間から無理なく力を相手の体軸につき貫き技を掛ける合気技」という意味を持つものである。今回の研究技は“肘極め・四方投げ・二ヶ条”である。
それでは肘極めからの研究開始である。まず“肘極めの形から相手の体幹中枢へと合気力を通して”相手を崩す所からの研究となる。ここにいう“合気力”という言葉も櫻井代表師範の造語であり…“ 自己深層から発生させる力で相手とのいかなる接点からでも自己と相手を一体化させ相手の体幹中枢に働きかけ崩し潰す力の事”である。
最近の合気道S.A.では肘極め(に限らず全ての技に共通であるが)は肘を極める・痛みを与えるというより相手の体幹を崩すという方向の技へとシフトしている。それは代表師範の“下半身のシッカリした強い所を崩してしまえば相手は抵抗する事は出来ず後は肘を極めるのも何をするのも自由自在である”という考えから来ており、実際の代表師範の技も肘を痛みで極めて何かするというよりそこから力を通して相手を崩す、即ち肘極めに取られても何故か分からない内に腰から崩され落とされてしまうという不思議な状態にされてしまう技となっている。正直、肘極めから移行する上段腕絡みは最早必要無い程なのである。
肘極めは本来相手の肘を自己の腕二本で極めてしまうかなり痛い技であるが、相手の肘関節や力が強かったりすると容易に抵抗されたりアッサリと返されたりするリスクもある。実際私自身も他流派の技であったが、肘関節を極められつつもそのまま側面入り身投げに入る事が可能であった。しかし代表師範の技のように一瞬にして腰を落とされてしまうともう何も出来なくなってしまうのである。さて肘極めの形からの力の通し方の研究であるが、肘極めの体勢から相手の体幹中枢に力を通そうとしてみてもどうしても相手との接触部分にまず力が加わってしまい(この場合、相手の肩である)容易に反応され抵抗されてしまう。代表師範によるとそうならない為には“添えている手の力を抜き柔らかく真綿で包み込むようなイメージで、また相手に力の発生源を悟られないように力を通す事が重要である”という。これは持ち手の意識や自己の力の発生源についての理解が深まっていないと非常に困難であった。
しかし…実際に代表師範の技を受けてみると抵抗も何も出来ず何度でもアッサリと腰から落とされてしまうし、また体格や肘の角度もそれ程気にする事は無いと代表師範がしゃがみ込み下から肘極めの形を取ってそこから力を通して腰を落とすという摩訶不思議な事も体験する事が出来たのである。上から下へ力を通すというのは頭で理解し易いが、下から上へ通りそしてまたそこから下へと落とす…しかも相手に反応させる事無く!である。正直、全く理解不能な事であった。暫くこの形で研究を続けた後、技の流れの中での力の通し方を試してみる。具体的には回し打ちからの内捌きをしてそのまま肘極めに入る形である。相手を崩していてその崩れの流れに乗る事が出来ればそのまま腰へと力を通す事が比較的容易になり理解がし易かった。代表師範によるとどちらも身体運用は同じであるとの事であったが、まずは技の流れの中での力の通し方を研究し、その後更に研究を深めて行くのが理解し易いのではないかと感じられたのであった。
次は四方投げの研究である。四方投げは合気道の技を理解するのに重要であると言われる技であり、正しくこれぞ合気道!という華麗な技である。しかし驚くべき事に…合気道S.A.の長年の組手・試合の経験より導き出されたのは“相手の脇の下をすり抜けるというのは大変困難で現実的では無い!”という結論であった。
かなりの実力差があったり、技を知らない者に掛けるのであれば可能であろうが、組手や試合の中においてお互い技を知っている者同士での戦いでは実はあまり現実的ではない。実際、合気道S.A.のオープントーナメントにおいて四方投げが極まったのは数える程度で殆ど無く、如何に困難であるかが理解出来るであろう。以前、他流派の方々が代表師範が“試合の中で使えない技の一つが四方投げである”と発言したのに対し色々と発言されていたみたいであるが、純然たる事実としてその結果が存在するのである。もしそれらが我々の技術が未熟故の事だとお考えの方々が居られたら、是非合気道S.A.のオープントーナメントに参加されてその技を試してみていただきたい。我々は常に学ぶ姿勢を持ち真摯な気持ちで勉強させていただきたいと考えている。それが合気道S.A.が進化する合気道と言われる所以であるからである。
さて前置きが長くなってしまったが、合気道S.A.では四方投げは前述の理由から“すり抜ける四方投げ”ではなく片手持ちの状態から相手の肘に手を差し込み丸く返す四方投げや手の持ち替えによる四方投げへと変化していっている。今回の研究会でも”すり抜けない四方投げ”についての研究であった。こちらでも相手の崩し方・手を丸く返す軌道・相手の抵抗にあった場合の力の通し方等について研究していったのである。こちらも他の技と同様に相手の体幹中枢に合気力を通す事により相手の抵抗を許さない代表師範の技を実際に受け、そしてその技のあまりの理解不能さに参加者全員で頭を悩ませつつ研究を深めて行ったのであった。
最後に二ヶ条の研究である。他流派では“手首・肘をくの字に90度に曲げ痛みを与えて極める技”であるが、最近の合気道S.A.では他の技と同様二ヶ条も痛みを与える事無く相手の体感を崩す技の方向へとシフトしている。こちらも痛くないのに全く抵抗出来ず一瞬にして腰を落とされてしまうという摩訶不思議な技である。痛みが無いので簡単に抵抗・反撃出来そうな感じはするのであるが、実際は全くの逆なのである。
代表師範曰く最近の方向性は“相手に反抗する理由を与えない”との事であるが、確かに一瞬にして下半身を崩してしまえばその後は如何様にも自由自在となるのだ。今回の二ヶ条は“折り畳む二ヶ条”であり、アコーディオンのように相手の手首・肘を折り畳んで行き、そのまま相手の体幹中枢を力を通し崩す技である。通常の二ヶ条のイメージが頭に染みついているとどうしても手首・肘を極めようとつい余計な力が入ってしまったり、痛みを与える方向へと力を通してしまう。代表師範によると“我を捨て技を掛けようとしない事・小手先を忘れ相手の自信を持っている強い所を攻める事が重要である”との事であり、我々もそれは頭では理解出来ているのであるが正しく“言うは易く行うは難し”である。無意識に余計な力が入り手首や肘を極めようとしてしまう現実を痛感させられる事となった。
代表師範の技を受けるとどんなに抵抗していたとしても本当に簡単にアッサリと手首・肘を折り畳まれ腰から落とされてしまう。何の力のぶつかりを感じる事も無くアッサリと!である。恐らく櫻井代表師範、即ち合気道S.A.以外にはこのような技は存在しないのではないだろうか。これらの不思議な感覚は実際に代表師範の技を体験してみないと言葉だけでは到底伝えきれないであろう。
このように参加者全員が頭を悩ませながら研究を深めて行ったのであるが、合気道S.A.の全ての技において重要なのは“小手先を忘れる・初動の圧を如何に無くすか・空間固定からの動き”等々である事が再認識・再確認出来、実に実りの多い有意義な時間となったのである。
最近、合気道S.A.では本部公式YouTubeチャンネルを開設した。代表師範の最新の技をそちらで公開しており、定期的に今後も更新される予定である。しかし、作成した側の我々が言うのも…であるが、恐らく動画等では代表師範の技の凄さは伝わり難いというか不可能であろう。こればかりは実際に体験していただくしか無く、もしこれらのレポートや動画で少しでも興味を持たれた方々は是非とも合気道S.A.の研究会・合宿等に参加してみる事をお勧めする。合気道S.A.門下生に限らず、他流派・他武道の方々にとっても新たな扉を開く一助となる事は間違いないであろう。
<合気道S.A. 広報部>
コメントをお書きください