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剣術・杖術・短刀術 広域指導資格認定合宿レポート

2024年9月15日~16日実施


 2024年9月15日(日)から16日(月)にかけ、立川近郊にて武器術の広域指導者資格認定合宿が開催された。「武器が身体の一部になっていくような稽古」をしていけるようになるきっかけ作りの場とする事を念頭に、指導と研究が進められていった。

 まずは短刀、杖、剣それぞれの基本打ちについての指導研究から始まった。武器の持ち方、振りかぶった時の形、打ち込む際の足の運び、武器への力の流し方等、指摘された部分は参加者それぞれであったけれど、自分では当たり前に出来ていると思ってやっていた事が、実は全然出来ていなかったと気づかされる場面が目立っていた。

 動き方を矯正されながら頭に浮かんだのは、代表師範がよく言っている「水は高い所から低い所へ流れる」という言葉だった。自分で稽古を進める際、ふと動き方が楽になったと感じた時がないだろうか。もしかしたら私だけかもしれないが、そのように感じた場合は大概、自分に都合の良いやり方へと無意識のうちに逃げてしまっているようだ。

 もちろん本人は楽をするつもりなど毛頭なく、技術を研鑽する気満々で稽古を続けているのだが、楽な方向へ逃げる現象はいつの間にか始まっており、それに陥ると肝心な基本から逸脱してしまいやすい。すると結果は横ばいで伸びない状態が続いたり、最悪は間違った方向へ進んでしまいかねない。今回の基本打ちの研究を通して自分の間違いとその改善点に気づけて良かったと思った。

 次に相対打ちについて研究をしていった。相対打ちは相手がいるので、1人でおこなう基本打ちに比べて武器の扱い方が難しくなる。自分の事だけでなく相手の事も考えて動かなくてはならないからだ。

しかし、基本打ちの正しい形がある程度身体に染み込んでいれば、相対打ちになっても自然とその動きが出てくるのだそうだ。

 そのような説明を基に参加者たちは稽古に励んでいたが、相手の攻撃に当たらないようにする事へ多くの意識を持っていかれてしまうのか、基本打ちに比べて武器の扱いが小さくなっている姿が目立っていた。基本打ちの正しいやり方について更なる研究が必要であると考えさせられた。

 また、相手の内に入るような捌き方についての研究も興味深かった。相手の攻撃に当たらないようにしようとすると、相手から離れるように外側へ大きく動くような捌き方になりやすい。すると相手に自分の動きが見えてしまって、結果追撃を受ける事になる。

 だから内に入るような捌きをすれば、相手に動きを察知されにくくなるので追撃されなくなるのだ。

 さらに相手が攻撃の仕方を見切った所をこちらが見切った上で動き始めるというのも重要なポイントとなってくる。しかし、「相手の見切りを見切る」というのが難しく、捌きが早くなってしまいがちだった。動き始めが早すぎると、それもまた相手が動きを察知して追撃してくる原因になるので、タイミングも含めて内に入る捌きについての更なる研究が必要だと思った。

 相対打ちの後は武器取りについて研究をした。武器取りの数は多いので、全部やるには時間が足りなくなる。だから、それぞれの武器について参加者が気になっている技を取り上げて、指導研究をしていくという形で進められた。参加者は各々の疑問を代表師範にぶつけ、解決法を模索していた。得た物が今後の稽古に於けるヒントになれば幸いである。

 武器取りで非常に興味深かったのは「相手を藁をも掴む状態にする」という崩し方だった。実際に代表師範から技を掛けて頂いたが、武器へすがっていないと姿勢を保てない状態で終始誘導されるという、とても不思議な体験であった。

 

 技を掛けられているのにその力は決して強引ではなく、末端には作用せずにただ受けの中心部へ入り込んでくる力の流れを感じた。その際、代表師範の動きと受け側の表面的な動きは最小限なのだが、その小さな動きの中に果たしてどれだけの技術が詰まっているのだろうか。絶妙に相手の流れを自分の流れに乗せてしまう技術こそ、まさに「合気」というものなのかもしれない。

 

 代表師範は技を掛ける際によく「相手の体感中枢に自己の合気力を透す」と説明している。それは漠然とした言い方ではあるが、合気力とは全身の使い方に於ける感覚的なものなので、具体的な説明は非常に難しいのである。ただ一つ言えるのは、腕の使い方だとか足運びだとかそういう部分的末端的な動きへの意識は関係ないという事だ。末端の動きは全身による身体操作の結果である。

 この合気力というものの本質とその流し方について理解が進めば、あの不思議な崩し方に自分の崩しも近づけるのではないかと思った。

 

 今回の合宿で指導説明された内容はどれも非常に高度な技術が要求される内容であり、一朝一夕では到底出来るものではない。これからの稽古に於いて如何に方向性を見誤らないまま自己の稽古を進めていけるかが大切になると考えられる。そのためには基本からずれない稽古を続けられる方法について模索していく所から自己の稽古を見直していく必要があると思った。

<合気道S.A. 広報部>