2023年11月18日~19日実施
2023年11月。合気道S.A.の広域指導者資格認定合宿が都内近郊で行われた。
この合宿では、本当に初心にかえって立ち方~基本動作~体捌き~型稽古~打撃、組手全てを改めて見直す事を行う。合気道は格闘技のような明確な構えを取らない為、構えをとることなく戦闘用の体勢になっていなければならない。合気道のイメージとしてとして相手の力とか勢いを利用して相手に返す技かのようなスタイルと思われやすいが、実際にはそんなに都合の良い技は存在しない。
実際に「相手の力や勢いを利用する」事は確かだが、と言っても簡単に相手に返すというよりは、相手が力も勢いも出ているところに対して自分の力を加えて自分の動きの中に相手を取り込み、相手の意図と異なる力を発生させて相手を崩す事が重要である。
この理屈から考えると、相手が力や勢いを出してきたところに対応できる状態を備えることが大事である。それだけに、改めて立ち方~基本動作~体捌きの稽古を見直すことが必要になってくる。立ち方、基本動作、体捌きのそれぞれが、一回憶えてしまったあとは慣れである程度行うことが出来てしまうのだが、そこに落とし穴が存在する。自分では気を付けて注意深く動いているつもりでも、人間は基本的に慣れている行動に対して最適化が行われてしまう。「慣れている動き」は「自分が動きやすい動き」ではあるかもしれないが、それが相手を崩せるような動きになっているかというのは別の話なのだ。
広域指導者認定合宿では普段の稽古者に加えて、別支部から稽古者が参加してくる。別の支部では当然指導者が存在するのだが、その指導者は櫻井師範に教わったものを守りつつ自分なりに解釈して進化させてゆく。その指導者に稽古者は教わる為、結果として現在の櫻井師範の目指している動きとは異なっていってしまう。稽古者は櫻井師範とは別の人間なので必然的にそうなってしまうのは当たり前のことなのだが、割と発生してしまうのが指導者を尊敬するあまり櫻井師範の現在の動きと同じであったと思い込んでしまう事である。
このバイアスは稽古者にとって非常に厄介で、異なるところを正すための合宿なのに今までやってきたことは間違いではないという結論となってしまうのだ。もちろん指導者は真面目に真剣にやっているため、その人なりの技術も合気道への理解度もあがっていく。しかし合宿の目的は「櫻井師範が今やっていること、考えていること」を学び、理解することに重きを置いて考えや動きを学ぶ方が良い。それは、広域指導者資格認定合宿という場が、合気道S.A.という技術体系を改めて学ぶことのできる場所であるからに他ならない。
立っている状態ですでに「自分の身体を動かして相手がどんな技を出してきても対応する事の出来る状態」にするためにはどうすればいいのか。その立っている状態から体捌きや攻撃という形での動きに自分を持っていく際に、どこから力を発するようにするのか。発生させた力はどう持続させ、どう運用し、どう変化させるのか。立ち方~基本動作~体捌きだけでもおそらく真剣に取り組んでしまうと合宿がそれだけで終わってしまうほど難しく、深い研究テーマである。
自分の動きだけでも難易度が高いところにきて、さらに自由に動く相手がいるという想定での型稽古に入っていくとなると、さらに考えることが増えてしまう。しかも考えているだけだと机上の空論で終わってしまう為、それを実際に型稽古や組手という形で試してみて自分なりのフィードバックを得ることも必要となる。
普段の稽古も皆一生懸命やっているとは思うが、どうしても独りよがりで自己満足的になってしまっている可能性は存在する。自分だけで客観性を持ってやろうとするのはなかなか難しい。合宿では数名のグループに分かれて互いをチェックしながら稽古をするのだが、そうするとできない事やさぼっている事が浮き彫りになり、得られるものは多い。
今回の合宿では「塊になって動く」事の重要さを櫻井師範が述べていた。如実にそれが感じられるのは体捌きだったが、考えてみると体捌きは基本動作の複合であり、基本動作は全て立っている状態から移行する。そして体捌きの後には相手への接触からの技となり型稽古に入るわけだが、そもそも体捌きの段階で相手との関係値がなりたっていないと技に入ってもあまり効果を発揮できない。
そうして逆算して考えてみると「技をかける為には体捌きが必要」となり「体捌きを満足に行う為には基本動作がしっかり出来る必要」があり「基本動作を自在に行えるようになる為には立っている段階で自由に力を発揮できる状態を作れている必要」があるということになる。
一つの技が掛かる掛からないというところで追求するのも悪くはないが、そこに至るまでのところを探求し技全体が掛かりやすくなる可能性を模索するのも大事である。そんなことを考えさせられる合宿であった。
<合気道S.A. 広報部>
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