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「つき貫ける合気」研究会レポート(A)

令和5年4月9日開催


2023年4月9日(日)立川市近郊にて「つき貫ける合気」研究会が開催された。ちなみに「つき貫ける」とは代表師範の造語であり、技の性質を端的に表したものである。

 

今回のテーマに上げられた技は、小手返し、側面入身投げ、四ヵ条抑えであった。一般的におこなわれている合気道技と合気道S.A.でおこなわれている技の違いについて言及する所から会は進行していった。

 

小手返しの場合、一般的には相手の手の甲へ自己の親指を掛けて外側へ返すようにしているが、合気道S.A.では手の甲へ親指を掛けず、手関節を挟み持つようにしている。また、小手を外側へ返すという発想もしていない。

その理由は、手の甲に親指を掛けると、その親指が相手に力の方向を教えてしまい、抵抗されやすくなるからである。小手を外側へ返そうとしないのも同様の理由からである。

また、手の甲へ親指を掛けると、もう一方の手を添えた際に自己の掌が相手の手の甲へ密着しなくなるので、力の伝達が分散してしまう。掌を密着させる事で力がしっかりと伝達できるようになるのだ。

そして、技を掛けようとする腕だけに向かうのではなく、相手の全体へ力を通し倒していくのである。そのためには、目線に関しても部分的に集中して見るのではなく、広い範囲を見るような目付けが大切になってくるという事だった。

側面入身投げは、相手をのけぞらせる事に重点を置くのではなく、相手と接触した自己の腕部より相手の全体を捉えるように力を通して、その全体を潰す形で掛けていく。その時、腕で相手の胸を押さないよう気をつけるのがポイントであった。そのようにすると相手が前傾姿勢で抵抗している場合であっても、掛ける事が出来ていた。

 

四ヵ条抑えは相手の脈部へ人差し指のつけ根をあてがい、圧迫して相手に激痛を与え倒す技とされているが、合気道S.A.では脈部へ人差し指のつけ根をあてがう事よりも、相手の手関節がロックされて動かなくなるような手関節の取り方を重視している。これは、手関節が自由に動く状態だと抵抗する力を出しやすくなる為だ。そして激痛を与えるのではなく、相手の全体へ力を通し倒していくのである。

ちなみに、試合でお互いが技を掛け合っている時、激痛を与えるタイプの四ヵ条を掛けても、その痛みに耐えられてしまい、技は掛からなかった。また、自分が同様の四ヵ条を掛けられた際も、痛さはあったが耐えられない程ではなかった。そのような体験から考えても、痛みを伴う四ヵ条の実戦に於ける効果は薄いと言えるのではないだろうか。それはおそらく、アドレナリンが出ている人間は痛みを感じにくくなるという事が原因ではないかと考えられる。

さて、これまで述べてきた事で気づかれたかもしれないが、合気道S.A.の技はどれも相手の全体を捉えるように力を通す事によって掛けている。実戦に於いては、痛みを伴う部分的な技は効きにくいという事から考えても、相手の全体を捉える技が有効であると言えるだろう。

 

今回の研究会では、それぞれの技の基本的な特徴について稽古研究をした他、各技ごとに具体的な技を例に挙げた稽古もおこなった。また、すれ違いざまに自分から技を掛けにいく稽古もおこなった。

特に、すれ違いざまに掛ける技に於ける、初動の崩しが大切という話が印象的だった。実際にやってみると、初動の崩しで相手の全体を捉えておかないと技は掛からなかった。

そしてすれ違いざまの技に限らず、全ての技に於いても初動の崩しは大切になってくる。もちろん「つき貫ける合気」による技の場合、相手が直立している状態からでも掛ける事が出来るが、初動の崩しを使った掛け方をするのが、やはり理想的な流れである。

今回の稽古中、初動の崩しをやろうとすると、相手を引き込もうとするような小手先の動きになってしまいやすかった。合気道S.A.では『技の内容が力や小手先であっても、相手が倒れればそれは技として認める』という考え方をしている。だから力任せに小手先で掛けたとしても、それで相手が倒れれば技として成立していると言える。そして、小手先や力による技は手近で見つけやすいので、その方向へ安易に流れてしまいやすい。

 

しかし、力を使った技には相手との筋力差や自身の老いという面に於いて限界がある。だから、簡単に気づける方法に甘んじず、小手先の力に頼らない「つき貫ける合気」の実現に向け、あきらめずに根気強く研究を進めていかなければならないと、今回の研究会を通して認識を新たにした。

<合気道S.A. 広報部>