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オ-プント-ナメント実戦合気道選手権大会(A)

令和5年3月21日開催


令和5年3月21日、実戦合気道選手権大会が東京都立川市近郊で行われた。

今回の大会も軽・中量級のトーナメント、重量級のトーナメントそれぞれの部門で試合を進め、各部門の優勝者で決勝戦を行い、総合優勝を決めるという形式がとられた。

今大会では、上は55歳を超える選手~下は高校生の選手まで参加して、技を競い合った。

左から 山本鏡明選手 櫻井文夫代表師範 平畠幹彦選手

軽・中量級トーナメント

  • 優勝 山本 鏡明(合気道S.A.八王子)

従来の大会においては、相手の懐に飛び込んでからの展開、もしくは出入りの瞬間を狙って打撃を入れつつ相手の腕をとるという動きがみられたが、今回から導入されたすべり止めの効果なのか過去の大会よりもお互いが取られた手を簡単に外しにくそうに見えた。

中でも相手の動きを瞬間的に捉えて動きを止めるような動作からカウンターにもっていく木村 圭吾 選手(合気道S.A.品川)、左右の掌打、コンパクトでキレのある下段蹴り、相手の片腕を両手で瞬間的に捉えての三カ条…と攻撃的な技を豊富にもつ山本選手の動きが目立った。

しかし木村選手は相手を止める時に一緒に自分も止まってしまうというところで、極めきるだけの攻撃力が発揮できなかったため、結果としてフィニッシュワークの足りない動きとなってしまい、山本選手は相手に対して豊富な攻撃手段を持ちつつも正面からの突破が多くなってしまったことで、立体的な攻撃とまで言えるほどの発展型の攻撃にはたどり着けなかったように思われる。また、

今回初参加の高校生 根井 博登 選手(合気道S.A.千葉)が参加したのもこの軽・中量級トーナメントとなるが、落ち着いた性格と初参加の緊張からか、攻撃を駆使して相手を倒すということよりも、相手の動きに対応するための防御的な動きが多かったため、勝ち進むことが出来なかった。もちろん防御は大切なのだが、目的をもって相手にどうアプローチしていく形を目指すのかだけは、常に頭において戦う必要があるという事を学べたかと思う。

根井博登選手(左) 山本鏡明選手(右)

重量級トーナメント

 

  • 優勝 平畠 幹彦(合気道S.A.大宮)

前回優勝の平畠選手が今大会でもはつらつとした活躍を見せた。以前の試合と比べると懐が深くなり、投げにも打撃にも対応できるだけの地力を身に着けて今大会に臨んでいるのが見て取れた。しかし、その対応力を発揮させるためになのか、前回大会で見せたような自分からの仕掛け、自分からの攻撃で技に入ろうとするようなアグレッシブな動きがあまり見られず、相手の動きに対応するようなカウンター的な動きに重きを置かれている感じに見られた。

一年で以前とは異なる身に着けていたことは見事だがカウンターはどうしても「後の先」となってしまうため、相手の投げや打撃に「対応」する動きとなり攻撃的な要素が減ってしまう。「後の先」のような相手の動きがあって初めて成立する動きをメインとしてしまうと、どうしても相手に動きに対しての対応に追われてしまうため、力や速度、体格やスタミナで勝る必要が出てきてしまい、技というよりは総合力での削り合いとなりやすくなってしまう。

櫻井師範が試合の前に語った、スピードとパワーは必ず歳と共に衰えます。という言葉を鑑みるに、そうでないモノを目指していきたいという櫻井師範の難しいオーダーが感じられた。

平畠幹彦選手(左) 山本鏡明選手(右)


総評

  • 総合優勝 山本 鏡明(合気道S.A.八王子)

何処までいっても、自分から技を仕掛けて相手を崩し、倒す、投げるという形に持ち込む必要があるのだ。明確な目的をもって攻撃を仕掛け、それに相手が反応したとしてもしなかったとしても何かしらの形で自分の技が効果を発揮するように出来れば、そこからの展開を有利に運べる可能性は高くなる。そこが前大会の総合決勝と今大会の総合決勝で大きな差となって表れた。

前大会では積極的に掛けに行く平畠選手に対して、カウンターでの対応を狙い続けた木村選手が持ち味を殺されてしまった形となった。今回は上中下全ての攻撃を駆使した山本選手に対して、止めようとする動きやカウンター的に技を狙った形となった平畠選手が後手に回ってしまい、動きが小さくなってしまったことで、本来ののびのびとした積極的な攻撃姿勢と全身を使った動きがほとんど見られず、持ち味を殺されてしまっていた。結果として本線ストレートで山本選手が総合優勝した。

 

興味深かったのは、それまで大型で打撃も非常に強い斎藤 康博 選手(合気道S.A東大和)のローや膝蹴りにもさほどひるまず、掌打も意に介さない動きが出来ていたのに、総合決勝でのみ山本選手の地を這うようなカーフキックや、左右連続の掌打でひるんだところを捕まえられてしまっていたところだ。相手の打撃のダメージを最少にする、組まれても掛けられても極めさせないという形は取れていたと思うのだが、それは「自分から攻撃を仕掛けながら」の時に発揮するような動きに見えた。カウンターを取るための防御、では山本選手の鋭く力強い攻撃に対抗するのは難しい。自分から攻撃を仕掛けるためにはどう動く事がいかに大事か?を改めて考えさせられる大会であった。