令和4年9月18・19日開催
2022年9月18日から19日にかけ、東京都立川市近郊にて武器術広域指導者合宿が実施された。
通常、合宿に初心者が参加した場合は武器術の基本について一通り説明をしていくが、今回は経験者だけの参加だったため、参加者が特に気になる所や、理解が難しいと思われる所について抜粋しながら合宿は進行された。そのため、全ての基本を辿るやり方よりも、自分が気になる部分について重点的に研究できたので、このやり方もとても有意義な方法だと思った。
今回の合宿を通して根幹にあったテーマは『力は結果的に武器の切っ先へ乗る』、『相手が自分の攻撃が当たったと錯覚するような捌き』であった。武器を扱う際に皆が考えるのは、切っ先へ力を『乗せる』事だろう。しかし、自ら故意に力を切っ先へ乗せようとすると、腕で武器を扱ってしまいやすく、肩や腕が力む原因になる。切っ先への力は故意に『乗せる』のではなく、結果的に『乗る』ようにするという事であった。
そう言われてやってみると、しっかりと故意に力を乗せようとしてしまっている自分に気づいた。力が切っ先へ結果的に乗るようにするためにはどのようにすべきなのか、今後の研究課題となった。相手と対峙し捌く時、自分はどのタイミングで動いているだろうか?動き始めが早過ぎると自分の動きやその方向などが相手にバレてしまい、最悪は相手が自分の動きについて来てしまう事になる。そこで、相手に自分の攻撃が当たったと錯覚させる捌き方が必要になってくる訳である。
研究は受けを取る事で代表師範の動きを実際に体験しながら進められた。横から見ている時、代表師範の動きは決して速いと言える動きはしていなかった。しかし、対峙して自分の攻撃が捌かれると、まるで残像を残して、いつの間にか捌かれているという印象だった。武器で代表師範の身体を確かに捉えたはずなのに本当はそこにいないのである。残像という形容は決して誇張ではない。生まれて初めての非常に不思議な経験であった。今後の捌きの稽古については、上記のような捌きをするためにはどうしていくべきかという代表師範の説明を思い出しながら取り組んでいこうと思った。
今回の合宿で、私は錬士五段への編入審査を受けた。審査を受けるにあたり、改めて色々と勉強をやり直して感じた事は、指導する際に相手へ言うべき事を伝える難しさと、自分がどんなに解っていると思っている事に対しても、準備を怠ってはならないという事であった。
錬士審査に於ける指導法とは、指導する際の『土台』となるものであり、初心者を指導対象としておこなう事を想定している。だから指導法に記載されている事をそのまま暗記して言えたとしても、それを聞いた初心者は到底理解しきれるものではない。指導する相手を観察し、その人にとって何を言ったらその人のためになるのかを判断して、その内容を土台である指導法から抜粋、構築して伝えていく事が大切なのである。
相手を観察するという事は技を掛けていく上でも大切な要素なので、指導によって観察力を鍛錬する事が、ひいては自分の技の向上にも繋がっていく。しかしこれが中々難しく、気がつくと余計な事まで話して、相手が逆に理解しにくくなってしまう事が多い。繰り返しやってみた結果、思った事全部のうち、だいたい8割が伝われば良い方だと感じた。伝えられる精度を上げるためには事前の準備も不可欠だ。なぜなら、自分では理解していると思ったから十分な準備しなかった事をいざやろうとした時、突発的に内容が飛んでしまい、説明できなくなる事があるからだ。
実はこれは以前受けた審査の際、実際に私が体験した事である。その失敗を踏まえて今回は全ての範囲を漏らさず準備した結果、内容が飛びにくく、飛んでもリカバリーする事が出来たので良かった。もちろんこれは審査中、他に色々やってしまった失敗を棚上げしての感想ではあるが。何はともあれ準備はしておいて損はないと、つくづく思った。指導をするとは、自分の脳に汗をかかせる場面が非常に多いと感じた。
脳に汗をかくような稽古は技の向上に於いて非常に有効である。ただ自分の稽古だけをやっていたり、たくさん身体を動かして良い汗をかいて終わるだけの稽古をしているよりも、指導が出来るようになる方が、自分の技がより一層向上するという旨を、以前に代表師範も言っていた。今後の稽古には、引き続き指導という側面からの考察もしていく事を忘れず、取り組んでいこうと思った。
<合気道S.A. 広報部>
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