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「つき貫ける合気」研究会レポート

令和4年8月21日開催


令和4年8月21日(日) つき貫ける合気研究会が東京近郊で開催された。

今回のつき貫ける合気研究会はシーズン3の二回目となり「つき貫ける上段腕絡み」「つき貫ける正面入身投げ」「つき貫ける三か条抑え」の三種類の技がテーマとなった。

上段腕絡み、正面入り身投げ、三ヵ条抑え……この三つの技は一見、形も作用も異なるものに見える。上段腕絡みであれば腕~肩辺りを、正面入り身投げであれば相手の首辺りを、三ヵ条抑えであれば手首辺りをターゲットにして相手に自分の力を伝えていって倒す技に思ってしまう。

 

だが櫻井師範からしてみれば、どの技も同じロジックと言って差し支えない部分があるという。要するには人間が立っている為の状態を維持するための土台、すなわち下半身を崩してしまえば、あとはそれが腕だろうが、首だろうが、手首だろうが関係なく土台がないまま宙に浮いているところをとらえてそっと誘導するだけでよいという。確かにそういわれてみると、下半身に力が入らない状態を作られたらちょっと押されただけで倒れる形になるというのは想像しやすい。

色々な格闘技、武術において相手のバランスを崩す技は沢山存在する。ただ、両足の力を失わせるというよりは、二本の脚を一本にまとめるような技術であったり、そうしておいて上下の揺さぶりや前後左右への作用を与えて倒すというような技術が多く見られた。しかし櫻井師範の技は両足の力を一気に消失させるため、受けた側は一気にトップスピードに持っていかれるような感触を味わう事が出来るような技となっている。そしてそれこそが表題となっている「つき貫ける合気」なのだと思われる。

今回の技であれば、相手の側面から腕を絡め崩しながら…相手の首筋に片手を差し入ながら…手首をとっておきながら相手の脇をすり抜けるようにして…という工程を経たうえで、絡んだ腕を中心に崩したり、相手の首をあおるように崩したり、手首を極めて地面に落とすという形になりがちだ。

櫻井師範の技をうけるとそのイメージが若干異なる。一言で言うと、早い。そして、軽い。もう少し言うと、触れた瞬間に崩しが始まっているとしか思えない崩され方をする。相手の腕に触れて腕を絡めてから崩す、ではなく相手の腕に触れて腕を絡めながら崩す、でもなく相手の腕に触れた瞬間に崩す、という感覚でもない。そもそも相手が崩れるように動いているのではないかというくらいの軽やかな感触であり、どこか特定の方向に相手を誘導して崩すような重みを感じないのである。にもかかわらず、そのような感覚を相手に与えるその動きは、相手が一番自信をもって抵抗、もしくは吸収を試みる箇所の中にある細く繊細な箇所に対して「全身の力を一気にぶち込む」ような身体操作を行っているという。

相手が一番自信をもって抵抗したり吸収しようとするような場所を狙うというのは、本来かなりリスクがある。技が未熟な場合には力を入れたところを跳ね返されたり吸収されて反撃を受ける可能性が非常に高い。掛かれば良いが、掛からなかった場合には相手はノーダメージ・ノータイムで反撃を試みることがしやすいという、実に武術であり武技である合気道の本質的な技の領域だと思われる。

しかし、ここに挑まなければさほど合気道技の面白みは得られないこともよく理解できるのが悩ましい。この研究会が3シーズン目に突入しただけのことはあって、非常にシンプルかつ難易度の高い領域の技術を学ぶ場になってきているのはありがたいことである。

 

それにしても櫻井師範の姿勢は素晴らしい。どうしても我々弟子としては師範から技を受けられる、という感覚でありがたく思ってしまい、おしえていただく技を掛けやすい形に近い形で受けようとしてしまうが、櫻井師範はそれを非常に嫌がる。そんな風に普通受けないでしょ?と「こちらが相手の動きに対応しやすい自然体」を促されるのだ。自分も研究中だと師範は良く口にされるが、本当にそのつもりで日々研究をされているのだということがよくわかる研究会でもあった。

<合気道S.A. 広報部>