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「つき貫ける合気」研究会

令和2年11月1日開催


令和2年11月1日、東京都立川市近郊において合気道SA主催による“つき貫ける合気”研究会が開催された。

 

“つき貫ける合気”とは合気道SA櫻井代表師範の造語で、「相手に技を掛けようとして相手の力の壁にまともに当たってしまい、相手に力が伝わらず技を返されてしまうとき、力の方向を変化させたりトリッキーな動作で無理やり相手に技を掛けるのではなく、相手の力の壁にある繊細な隙間から無理なく力を相手の体軸につき貫き技を掛ける合気技」のことである。

 

今回の研究会では“肘極め・四方投げ・二ヵ条抑え”の3つの技について研究が行われた。

まずは“肘極め”である。“肘極め”とは相手の肘を自己の両腕で絡め相手の肘の曲がらない方向に圧力を加え制し抑える技である。この技の場合、どうしても相手の肘を極めようとするあまり小手先にばかり目が行き、自己の両腕・両肩に力が入り過ぎてしまい脇が開き肩も上がってしまいがちである。

 

まず代表師範は相手をしっかりと崩し相手の肩を下げさせて技に入る事・持ち手や両腕の力を抜き自己の肩や肘を落とす事・相手の肘下への腕の絡め方・位置…等々の技を極める際の諸々の注意点につき解説をされた。その後、各自でペアとなり技の流れや確認を行ない、また代表師範の技を実際に受けてみて、どうすればより理想的な形へと持って行けるのか様々な視点から研究を行った。この際、無駄な力を入れる事無く、また無理に両手を組み肘を極める事に意識をする事無く、相手の下半身へと力を通し相手の体勢を崩し抵抗出来なくする事により、結果として両手が組み合わされ肘も極まるようになる!とのアドバイスを代表師範よりいただいた。

 

自己や相手の小手先ばかりに意識をやるのでは無く、自己の核から発生させた背中からの力を相手の核へと通す事が重要であるという。すなわち相手の肘ばかりを無理に極めようとするのではなく、相手の核へと力を通し体勢を崩してしまえば後は自由自在であるという事である。その状態になれば肘極めからの上段腕絡みへの移行もスムーズになり相手からの抵抗を受ける事は無いのである。

次に“四方投げ”である。四方投げは合気道らしいといえる華麗な技であるが、実際に相手を投げようとすると様々な抵抗を受ける場合がある。ここでは代表師範の長年の経験により得られた“相手の抵抗を生まない”重要なポイント“(身体の使い方・相手の抵抗・力の通し方)について、実際に技を掛け合い実証と研究を行なった。

四方投げはどうしても相手の腕をすり抜けて投げる時に相手の体勢を戻してしまい抵抗を受けてしまう時がある。この辺りについても“持ち手・相手の腕のすり抜け方・回転重心移動・力の通し方”等々について様々な実証や具体的な研究を行い、四方投げを見た目だけではなく、より実践的で使える技へと進化させる事を成功させたのである。

 

次に“二ヵ条抑え”である。二ヵ条も合気道の技としてはポピュラーな技であり、最近では動画等で様々な解説や実演が行われているようである。この技においても小手先の痛みだけでなく(痛みだけで倒す事が出来るのであればそれを否定するものではない)相手の下半身へと力を通し効かせる技でなければならない。合気道経験者同士であれば稽古の積み重ねで手首も強くなっており、単純な痛みだけでは倒す事は実際には困難なのである。

二ヵ条においてもまず代表師範による解説・実演の後、ペアになり技の流れや確認を行っていった。二ヵ条の基本である“相手の肘と手首をくの字型”にして力を通そうと試みるが、技としては極まり痛みもあるのであるが、自己の力が相手の小手先だけでなく下半身へと通るかといえば中々難しく、どうしても相手の肘や肩で止まってしまい下半身へとは通らない。各自様々に試行錯誤しながら技を掛け合うのではあるがどうしても思うようにはならないのである。

この点について代表師範からは“小手先に拘らない・小手先を忘れ技を掛けようとはしない・力を入れるのではなく力を通す事を意識する・自己の核から発生させた背中からの力を相手に通す”等のアドバイスをいただいたのである。

今回も3つの技について様々な研究を行った訳ではあるが…やはり合気道の技というものは、代表師範が常々仰っているように“この技はこう!と個別に存在するものではなく、本質的なものは共通であり繋がっている”ものであると再認識する事が出来た。

また合気道技というものは学べば直ぐに出来るようになる!といったものではなく、様々な試行錯誤や考えた稽古を長年積み重ね、またこういった研究会や各種講習会等にも積極的に参加し自分の気づきや経験を積み重ねていった上で初めて“ものになる”ものなのであろう。

そういった意味では合気道SAは各種講習会・合宿・試合等々につきSA門下生のみならず、他武道・他流派の方々へ広く門戸を開いており、また櫻井代表師範の技を実際に受ける事の出来るという点においてこの上無く貴重な体験の場となるであろう。

技の効き・技への入り方・技自体への疑問をお持ちの方々は是非とも積極的に参加してみる事をお勧めする。次回、令和3年の2月の研究会で基本技は一回りとなるが、それ以降についても開催予定である。

 

型だけでなく相手の抵抗や反撃をものともせず、相手の核へと“つき貫ける”本物の合気道技を体験出来る数少ない機会である。他武道・流派に関わらず一度参加し実際に体験してみる事をお勧めする。

<合気道S.A. 広報部>